本稿では、テニスのサーブが最速で上達する練習方法を解説しています。
スポーツの技術向上には脳が関わっていますから、テニスのサーブ上達にも脳のメカニズムを活かしましょう。フォーム指導から進化を遂げた最速のテニス上達理論を実践してみてください。
サーブはテニスにおいて、自分から打つことができる唯一のチャンスです。サーブの技術が高ければそれだけゲームを有利に進めることができるでしょう。
テニスのサーブで重要なものは「感覚」
従来のテニスの指導ではフォームを重視したものが多く見られました。最近では形を重視する指導から、体の機能にフォーカスした理論も広がりを見せています。
始めに、本章のポイントを押さえておきましょう。
【Point】
- テニスの技術の本質は「感覚」
- 脳は繰り返しによって神経ネットワークを構築して学習する
- 体の感覚で行うべきことを頭で考えすぎるとエラーが起きる
サーブ上達の最短ルートは脳の仕組みに合った練習方法
テニスのサーブが最短で上手くなるための練習方法は、脳のメカニズムに合った方法です。
脳というと頭で考えるイメージが強いかもしれません。実際、脳を活かす勉強法などの分野は書店でもよく見られます。
スポーツが上達することも脳が関わっています。勉強であれ、芸術であれ、スポーツであれ、何かを「学習する」という役割の中核を担っているのは脳です。
スポーツのレベルアップの鍵となるのは脳。テニスのサーブ上達についても、脳の仕組みを活かした練習方法が最短ルートです。
サーブの技術は感覚
テニスの技術で本当に重要なものは「感覚」です。感覚とは生まれつきの才能ではなく、反復練習によって誰もが身に付けられるものです。サーブであればサーブの感覚を身に付けることが不可欠です。
そもそもテニスにおいて「技術」とは何でしょうか?ここでは「狙い通りにボールを打つ、ボールコントロール能力」と理解しておきます。
狙ったところにボールが打てなければラリーができませんし、試合で勝つことは困難。その意味ではボールコントロールがテニス上達のコアになると言えるでしょう。
テニスのフォームは上級者が行ってい動作を後から説明したもので、その動作を行うために必要なのは感覚です。
「サーブの膝のタメ」や「手首のプロネーション」などは説明としては正確だと思います。しかし、その動作がアウトプットされている裏側にある本質に目を向けなければテニス上達は難しいでしょう。
テニスの感覚を身に付ける脳のメカニズム
テニスの技術が感覚、と言うと曖昧なものに思われるかもしれません。多くのプレーヤーは「何となくではなく、しっかりと意識してプレーしないと…」と思いがちです。
しかし人間の体には自動制御機能があり、動作を何となく行うことができます。
例えば自転車に乗ることを考えてみましょう。初めて自転車に乗る時にはバランスが保てず前に進むことができませんが、練習するうちに自然に慣れてきます。そして一度自転車に乗られるようになると、感覚で運転ができるようになっています。
テニスも自転車と同じように、体を動かして行う活動です。脳は反復練習によって神経ネットワークを作り上げ、自然に学習を進めていきます。つまり正確なボールコントロール技術は、反復練習を行えば脳が自動的に学習してくれるものなのです。
サーブが上手くなりたければ、繰り返しサーブを打つこと。これが基本です。
テニスのサーブが上達する練習法
本章ではサーブの具体的な練習方法を見ていきましょう。先ほどまでに解説した通り、脳のメカニズムを活かしてサーブの感覚を身に付ける方法が、最速で上達する方法です。
【Point】
- 脳はイメージした方向に自動的に進む性質がある
- 一点に集中することで雑念をキャンセルでき、学習効率が上がる
- ボールだけに集中してプレーすることでテニスの感覚が磨かれる
テニスのサーブの基本
サーブの動作で重要なのは感覚ですが、グリップやトスなどの基本は押さえておきましょう。最低限の基礎さえ押さえておけば、後は繰り返しによって脳神経ネットワークの強化に任せます。
サーブのグリップの基本はコンチネンタル
サーブを打つ時には「コンチネンタルグリップ」で握りましょう。
コンチネンタルのイメージは「包丁握り」。「うちわ」を持つ感覚でも良いかもしれません。手のひらとラケット面が垂直になるような角度になります。
サーブの際にグリップチェンジを行う大きな理由に、手首の可動域があります。「うちわであおぐ時の動き」がサーブで自然に使えるのがこちらのグリップです。
コンチネンタルグリップは基本ではありますが、グリップには個人差があります。グリップの形に捉われない方がいいでしょう。
サーブの動作
サーブを打つ時には、左手でボールを上にトスします(右利きの場合)。トスのポイントはリラックスして上げること。
腕に余計な力が入ると安定しませんので、ボールを軽く握って力を抜きましょう。肘は曲げず、伸ばした状態で上げるのが基本です。
トスの動作に迷ったときは、一度リセットしましょう。「打ちたいコースに視点を向けて集中する」と、余計なことを考えずに体の自然な動作に任せることができます。
頭で考えすぎて迷ってしまう時には、一点にフォーカスして頭の中をクリアにすることがお薦めです。
トスを上げたら高い打点でボールをインパクトします。サーブは自分側のエンドラインの後ろから打ち、ネットを越え、相手のサービスコート内に入れることがルール上の条件です。
脳のメカニズムを活かしたサーブの感覚を磨く練習方法
ここからが脳の仕組みを活かしたサーブの練習方法です。ポイントは以下のようになります。
- サーブのイメージトレーニングを行う
- ボールの軌道を逆算でイメージする
- ボールだけに集中して繰り返しサーブを打つ
順番に理解していきましょう。
サーブのイメージトレーニング
スポーツが上達するためにはイメージトレーニングが非常に重要です。スポーツはイメージの働きだけでも上手くなることができます。
人間の脳はイメージと現実を区別していません。映画の世界に臨場感が移り、感動や恐怖を感じる。これは読書でも同じことが起こり得ます。つまり、映像や言葉で描かれた世界に現実と同じようなリアリティを感じるのが人間の脳なのです。
テニスでサーブが上手くなりたければ、以下の2つのイメージトレーングを行ってください。
- サーブが上手い選手の動きを繰り返し見る(映像でもOK)
- 自分が理想のサーブを打っているところをリアルにイメージする
これらのイメージトレーングを行うだけで、脳内では理想のサーブのモーション(動作)が仮想体験されています。自分が現実にサーブを打っているのと同じような効果が期待できるのです。
イメージの世界では自由なプレーが可能で、しかもそのイメージは現実の動作に影響する。これがイメージが持つ力です。
始めはテニス上級者のサーブを見ることから行うことをお薦めします。その方が、サーブの動きをよりリアルなものとして感じられるからです。
脳内に正しいイメージが刷り込まれていれば、体は自然にそのイメージを再現します。人間が行動を起こす時には、未来の目的地にを決定することで、現在行うことが決まります。イメージを先に作っておいて、後は反復練習を通して脳が学習するのに任せましょう。
ボールだけに集中して繰り返しサーブを打つ
現実にサーブを打つ時には、ボールだけに意識を集中しましょう。頭の中でフォームを意識したり、考え事をせず、目の前のプレーにフォーカスします。
ボールに集中することを習慣化するだけで、テニス上達は格段に速くなります。
前述の通り、人間の体は常に自動的に制御されています。スムーズな運動は小脳を中心とした無意識の働きだと考えられています。無意識に任せるべき体の動きに頭で考えて介入しようとすると、自然な動作が妨げられてしまいます。
「フォームを意識しているのにスイングが上手くいかない」→「さらにフォームを意識して修正する」→「ますますショットが上手くいかない」→…
テニスプレーヤーはしばしば上のような悩みを持ちます。フォームに悩みを感じているとき、フォームを考えることによって解決することは困難です。解決するためには「フォームについて考えることをやめること」です。
ただし、考えるのをやめようとすると上手くいきません。そこで実践するのが「一点集中」です。
サーブを打つ時にはフォームは気にせず、ボールだけに集中してスイングしましょう。あるテーマに集中することで脳の学習効率が上がります。
プレーヤーがボールという一点に集中しているとき、余計な雑念は消え、頭の中がクリアな状態でプレーすることができます。このとき脳はボールの動きを正確にキャッチし、神経ネットワークを構築、スイングを自動的に最適化してくれます。
まとめ
●脳は繰り返しによって自動的に神経ネットワークを作り、学習する
●人間の体は無意識の働きによって自動制御されている
●サーブのグリップはコンチネンタル。体の力を抜いてトスを上げ、高い打点でボールをヒットする
●サーブ上達のステップは「イメージ」→「集中」
●イメージトレーニングを行うことで、脳は理想のプレーを仮想体験する
●ボールに集中して練習を繰り返すと、脳は最速でサーブを学習する