本稿では、脳のメカニズムを活かして最速で卓球のサーブが上達する方法を解説しています。前半では、卓球サーブのルールや打ち方のコツに触れ、後半ではサーブの動作が感覚として身に付くための新しい練習方法を提案します。
卓球のテクニックを身に付ける上では、ルールや打ち方の基本などは知っておく方がいいでしょう。しかし、理論にこだわると技術の本質を身に付けることは難しいでしょう。
ぜひ本稿でご紹介している卓球上達法を実際に試してみてください。皆様が望ましい変化を感じられることを祈念しています。
卓球のサーブのルール
卓球はラリーの第一打をサーブから始めます。サーブは唯一自分からボールを打てるチャンスですから、しっかりと練習しておきましょう。
卓球のサーブにはいくつかのルールがあります。通常のラリーとは異なる点がありますので覚えておきましょう。
【Point】
- サーブの基本ルールは「ボールを隠さないこと」「一度、自分側の卓球台でバウンドさせること」
- ルールに則ったフェアなプレーを心がける
卓球台の自分側でワンバウンドさせてから、相手側に入れる
サーブは卓球台の自分側でワンバウンドさせましょう。ネットに当たって相手側の台に入った場合は、サーブはやり直しになります。
トスは16cm以上上げる
卓球のサーブではラケットを持たない手でボールを上げますが、高さは16cm以上にする必要があります。トスが低いと相手が予期していないタイミングで打つことができますが、サーバー、レシーバーの両サイドの準備が整うようなサーブの打ち方をします。
ボールを隠さない
サーブを打つ時には相手プレーヤーからボールが見えるような打ち方にします。具体的には以下のような点に注意しましょう。
・背中でラケットやボールを隠さない
・手のひらでボールを隠さない
サーブを構えた時に相手からラケットが見えないようにしたり、トスを上げる手でボールを隠さないようにしましょう。あくまでルールに則ったフェアな態度でゲームに臨みましょう。
手のひらの上でボールを静止させる
サーブのトスを上げる前に、一度手のひらの上でボールが静止するようにしましょう。
卓球サーブのコツ
詳しくは後述しますが、卓球のサーブが上手くなるためには反復練習で感覚を身に付けることが大切です。繰り返しによってラケットでボールを打つ感覚が掴めれば、全てのショットの質が上がります。
それを押さえた上で、サーブの基本的なポイントも押さえておきましょう。こちらはあくまで参考程度で、打ち方に迷うようならボールだけに意識を集中してリセットします。
【Point】
- サーブのポイントを押さえておくことでより有効なサーブが打てる
- 基本は「攻められないサーブ」を身に付けること
- サーブのポイントは「打点を低くする」「2バウンド目が相手の台に納まるようにする」
- ボールに合ったラケットワークが身に付くと、多彩なサーブが打てるようになる
卓球のサーブの基本は「攻められないこと」
卓球のサーブで優先するべきことは「相手に攻められないこと」です。
卓球のサーブはツーバウンドさせるため、威力のあるボールを打つことはできません。バウンドを低く抑え、相手に2球目で攻撃されないサーブを身に付けておきましょう。
サーブの技術(感覚)が向上してくると、強烈なスピンを掛けてサーブで攻めることもできます。
サーブの打点は低く(卓球台に近く)する
トスを上げてラケットでボールをヒットする時、打点は低くしましょう。
もしも高い打点からボールを打って自分の台でワンバウンドさせたとすると、サーブのバウンドは高くなります。バウンドが高いということは、相手にとっては強打するチャンスになります。
低バウンドのサーブを打つためのコツは、自分がサーブを打つ打点を下げることです。そうすることで、ネットすれすれを通る隙の無いサーブに近づきます。
サーブが相手側の台でツーバウンドするように打つ
卓球では、相手側の台でツーバウンドするサーブを打てるようにしておきましょう。
サーブは自分側の台でワンバウンドした後、相手側の台でワンバウンドします。レシーバーは相手側でツーバウンドする前に返球することになります。
攻められないサーブの目安として、サーブが相手側でツーバウンド(2回バウンド)することが挙げられるのです。ツーバウンド目が台の外になる場合、相手プレーヤーはバックスイングを取ってボールを打つことができます。
相手側でツーバウンドする場合、レシーバーは台上でスイングをしなければならず、二球目で強打は打ちづらくなります。
脳科学を活かした卓球のサーブ上達法
卓球の技術の本質は「感覚」です。
卓球が上手くなりたいと思うと、ラケットの「バックスイング」や「フォロースルー」などのフォームを意識しがちです。しかし体を動かすスポーツにおいては、感覚でのプレーをベースとした方が上達がいやすいと思われます。
始めに、本章のポイントをまとめておきましょう。
【Point】
- 卓球の技術は反復練習によって身に付く「感覚」
- 体は自動的に脳内のイメージに向かう
- イメージで理想的なサーブのシミュレーションを行う
- ボールだけに集中して練習を繰り返す
それでは具体的な内容を見ていきましょう。
卓球の技術は反復練習によって身に付く「感覚」
本章の始めでも触れた通り、卓球が上手くなるために身に付けるべきものは感覚です。感覚というと曖昧なようですが、実は皆さんが日々の生活の中で使っているものでもあります。
自転車に乗る時のことを考えてみてください。初めて自転車に乗る時にはバランスを取るのが難しく、何度も転んでしまいます。しかし練習を繰り返すことで「何となく」乗れるようになります。
自転車の他にも、歩くときや、車の運転をするとき。いずれも反復練習によって動作に慣れ、自動的に行えるようになるものです。アクセルやブレーキなどの基本的な知識(理論)は必要とは言え、本質は繰り返しによる感覚にあります。
卓球が上手くなるためにも、繰り返しボールを打つことによって身に付く感覚の働きが不可欠です。脳は繰り返し刺激を与えることで神経ネットワークを作り、学習を進めます。
卓球というスポーツの学習を脳内で効率よく進めるためには、脳のメカニズムに合った方法で練習を繰り返すことです。
それでは、脳のメカニズムに合った練習方法とはどのようなものなのでしょうか?
卓球のサーブの軌道を逆算でイメージする
卓球のサーブ練習の準備として「ボールの軌道を逆算でイメージ」しておきましょう。メンタルリハーサルと呼ばれる方法です。
「自分が狙うポイント(卓球台の相手側)からネットの上を通過し、自分側でバウンド、そしてサーブの打点」。このようにサーブの軌道を巻き戻しでイメージします。
未来の目標地点を先に決めて逆算することで、そこに至るルートがはっきりと脳内で意識されます。メンタルリハーサルを行えば、体は自然にイメージしたポイントを狙います。
なぜボールの軌道のイメージが有効なのでしょうか?
人間はイメージした方向へ自然に向かう性質があります。視線を向けている方向や、頭の中で思い描いている方向です。
そもそも、人間の脳は現実とイメージを区別していません。映画や小説の世界に感動して涙を流したり、恐怖で心拍数が上がったりします。フィクションの世界であっても臨場感があれば、体は現実と同じように反応してしまうのです。
卓球のサーブのイメージトレーニング
ボールの軌道のメンタルリハーサルは、実際にサーブを打つ前に行うものです。
メンタルリハーサルに加えて、サーブの動きのイメージトレーニングも行いましょう。イメージトレーニングには主に以下の2つの方法があります。
・卓球上級者のサーブを見る(映像でもOK)
・自分が理想のサーブを打っているところをリアルにイメージする
前述の通り脳はイメージから現実のような影響を受けます。サーブの理想的なイメージを何度も思い描くことで、そのプレーを現実に何度も繰り返すような効果が期待できます。
サーブのイメージの臨場感が強化されれば、体の動きはイメージを実現するよう動きます。
ボールだけに集中してサーブを繰り返し打つ
卓球でサーブを打つ時にはボールに集中するようにしましょう。卓球はプレー中に「ボールに集中」することで上達のスピードが飛躍的に上がります。
ボールという一点に集中することで脳内の雑念はキャンセルされ、クリアな意識でボールをヒットすることができます。ボールに意識を向けるべき場面でフォームなどに気を取られていると、正確なショットを打つことは叶いません。
ボールという一点に意識を向けているとき、脳は目の前のプレーにリアリティ(臨場感)を感じます。卓球のプレーが五感を通した情報として脳に送りこまれている状態です。
脳にプレーの情報が送り込まれれば自然に脳神経ネットワークが作られていきます。このときプレーヤーは感覚として正確でスピーディなプレーが身に付いているのです。
まとめ
●卓球のサーブは以下のルールに則る
①自分側の台でワンバウンドさせる
②トスは16cm以上の高さに上げる
③ボールを手のひらや体で隠さないようにする
●卓球のサーブを低弾道にするコツ
①サーブの打点を低くする
②相手側の台でツーバウンドするように打つ
●卓球のサーブの本質は、反復練習によって身に付く感覚
●脳内にサーブのイメージを作ると現実の体の動きが良くなる
●ボールだけに集中することで雑念をキャンセルされ、卓球上達スピードが最大化する