本稿では、卓球でバックハンドドライブが打てるようになる練習方法を解説しています。スピーディな卓球のラリーにおいて、攻撃的なバックドライブの技術はぜひ身に付けておきたいものです。
卓球プレーヤーの中にはバックハンドに対して苦手意識を持っている方もいるかもしれませんが、正しい練習を行えば身に付けることができます。
バックハンドの正しい練習方法とは「脳のメカニズムに合った練習方法」です。本稿で説明している脳の仕組みを活かしたバックハンド上達法で皆様の卓球ライフが充実することを願っています。
卓球バックハンドドライブが上達する脳のメカニズム
本章では、卓球におけるバックハンドの位置づけや、バックハンド上達のための基本的な脳の仕組みについて押さえておきましょう。
Point
・バックハンド技術の本質は感覚
・卓球ではバックハンドの技術があることでプレーの幅が広がる
・バックハンドドライブを身に付けることは「プレースピード」「フットワーク」などにもメリットがある
・バックハンドが苦手に感じる原因は慣れていないから
それでは、各ポイントについて解説していきます。
バックハンドは卓球において必須の技術
バックハンドは卓球において身に付けておきたい必須の技術です。利き手側のショットが「フォアハンド」で、利き手と反対側で打つショットが「バックハンド」ですね。
卓球はプレーヤー同士が2m74cmの台を挟んで初速180kmに至るボールをラリーし合うスポーツです。ショットとショットの間の時間は他のラケット種目と比較しても短く、スピーディなプレーが求められる競技だと言えるでしょう。
そのようなスピード感のあるラリーを常にフォアハンドで行うことは現実的ではありません。確かにフォアハンドは卓球においてメインの技術と言えますが、バックハンドを打つ場面は必ずあります。
フォアハンドの基本がドライブ(トップスピン)をかけたショットであるように、バックハンドもドライブを掛けて振りぬいたショットが打てるれば理想的。
バックハンドが相手側に返すという意識のプレーヤーも多いと思われますが、バックハンドでスピンの効いた攻撃的なショットが打てればプレーの幅はぐんと広がります。
バックハンドドライブは「プレースピード」「フットワーク」にメリット
バックハンドドライブが身に付くと、「プレースピード」や「フットワーク」などの面でメリットがあります。フォアハンドばかりを使っていると、次のプレーへの準備が遅れてしまうからです。
純粋に体の動きだけで考えれば、利き手側に打たれたボールはフォアハンドで打ち、利き手と反対側に打たれたボールはバックハンドで打つことが最もロスが少ないプレーです。
バックハンド寄りのボールをフォアに回りこんで打つことは、その分左右のフットワークの幅が大きくなります。体がニュートラルポジションから流れた状態でカウンターを打たれると、次のプレーに間に合わない可能性が上がります。
浮き球をスマッシュするときにフォアで打つのはいいですが、フォアの意識が強いとプレースピードに付いていけない場合があります。攻撃的なバックハンドドライブ技術は時間のロスをカバーしてくれるのです。
バックハンドドライブ技術の本質は「感覚」
バックハンドドライブ技術で最も重要なものは「感覚」です。
卓球のショット全般に言えることですが、コンマ数秒の間に行われるラリーを頭で考えながら正確に実現することはできません。ラリーを可能にするのは体の直観的な働きです。
感覚というと曖昧なようですが、自転車に乗るように人間にはナチュラルに備わっている能力です。
ではどうすればバックハンドドライブの感覚を身に付ければいいのでしょうか?
バックハンド練習の基本は「反復練習」です。当たり前のように思われるかもしれませんが、スポーツの練習においてはこの本質から離れてしまう場合があります。
先ほどの自転車の例のように、脳は繰り返し経験を積むことで自然に学習を進めます。刺激が与えられることで脳神経のネットワークが強化され、より正確な情報処理が可能になります。
脳内で情報処理が向上するということは、その分だけ物事が上達していることを意味します。
ですから、バックハンドが上手くなる練習の基本は「繰り返しバックハンドを打つこと」です。
サーブはサーブを打つことで、フォアハンドはフォアハンドを打つことで上達するのですが、脳の自然な学習のプロセスが上手く働かない原因があると、苦手ショットだと感じられます。この点についてもう少し詳しく考えてみましょう。
バックハンドが苦手な原因は慣れていないから
卓球のバックハンドが苦手に感じられる最大の要因は「バックハンドに慣れていないこと」です。
卓球のメインとなるショットはフォアハンドで、初心者の頃から打球数を最も多く練習するショットでもあるでしょう。バックハンドはフォアハンドに慣れた後で練習するために、フォアハンドとは技術に差があります。そこで苦手意識が生まれることがあるわけです。
実際にはバックハンドドライブの技術そのものが難しい訳ではありません。練習回数が多いフォアハンドなどのショットと比較してしまうために、難しいと感じるのだと思われます。
「バックハンドが上手く打てない」と思うからこそ、頭で打ち方を考えて修正をしようとし、ますます体の自然な動きが使えなくなります。
前述の通り、バックハンドのスイングは反復練習で自然にスムーズになっていくのですが、このとき
卓球バックハンドドライブが高速で身に付く練習メニュー
前章では、バックハンド技術の本質は感覚であること。感覚を磨く基本は反復練習にあることなどを確認しました。
本章では、脳のメカニズムを生かして最大スピードでバックハンドが上達する練習メニューをご紹介します。
Point
・ボールに集中することで雑念がキャンセルされ、学習スピードが上がる
・イメージトレーニングによってバックハンドのスイングを脳にインストールする
・スイングは意識して修正するのではなく、体の自動制御に任せる
練習のポイントは「集中」と「イメージ」。
バックハンドドライブ練習の基本は「ボールだけに集中してバックハンドを繰り返し打つこと」です。プレー中に行うことは基本的にはこれだけでいいでしょう。
加えて「イメージトレーニング」を行うことで、スイングが自動的に最適化されていきます。
以下でより詳しく解説します。
「ボールに集中」してバックハンドを繰り返し練習する
人間はある対象(テーマ)に意識を集中しているとき、学習効率が上がります。
卓球のプレーで集中の対象とするべきものは「ボール」です。ボールという一点に集中する習慣を身に付けることで雑念がキャンセルされ、脳がスイングを高速学習します。
脳が卓球のプレーを学習するためにはプレーそのものの情報を脳がキャッチする必要があります。「バックハンドのテークバックは…」と考えることは目の前のプレーへの意識が薄れている状態です。
リラックスしてボールをよく見て、体の自然な動きに任せてバックハンドのスイングを繰り返しましょう。フォームなどは気にする必要はありません。
前述の通り脳は自動的に学習する働きがありますから、スイングを繰り返すことでボールコントロールの感覚が身に付いてきます。ボールに集中した状態でラケットのラバーとボールの接触の感触を何度も経験すれば、スピードや回転のコントロールが感じられるようになります。
「感覚でバックハンドが打てるなんて、才能がある人だけでは?」と思わるかもしれませんが、感覚は誰もが身に付けられるものです。大切なのは正しい方法で練習を実践することです。
脳内に神経ネットワークが正しく組み上げられる方法で練習を繰り返せば、スピンが利いた鋭いバックハンドが身に付けられます。
「イメージトレーニング」で理想のバックハンドスイングをインストールする
卓球の練習メニューに「イメージトレーニング」を取り入れましょう。イメージトレーニングはスポーツ上達のために大変効果的です。
卓球のプレーは、卓球上級者のプレーを見るだけでもレベルアップします。バックハンドドライブもイメージの働きを活かせば上達が加速します。
バックハンドドライブのイメージトレーニングは以下の2つの方法で行います。
・バックハンドが上手い選手の動きを見る(映像でもOK)
・自分が理想的なバックハンドを打っているところをリアルにイメージする
いずれの方法も効果的ですが、上級者の動きを見ることから始めると高度なプレーのイメージがよりリアルに描けるようになるでしょう。
人間の脳には「ミラーニューロン」という神経細胞が確認されています。これはミラーと名のつく通り「他人の動きを見て、その動作を自分が行っているかのように活性化する脳神経」です。
脳はイメージと現実を区別していないと考えられています。映画を見ているときや、頭の中で何かを想像しているとき、脳は物理的な世界よりもイメージの世界にリアリティを感じています。
フィクションで感動して涙を流したりすることからも、イメージが現実の体に強い影響を与えていることが分かります。
トッププレーヤーのバックハンドの動きを見ることで脳内ではそのスイングが仮想体験されています。バックハンドを脳内にインストールするイメージです。
脳内にイメージが刷り込まれていれば、現実に練習するときにはボールだけに集中してショットを繰り返します。このとき脳はイメージを現実に再現しようと働きます。
まとめ
●バックハンドは卓球のラリーにおいて必須の技術
●バックハンドの技術の中核は「感覚」
●脳のメカニズムに合った方法がバックハンド上達の最短ルート
【バックハンドドライブ練習法】
①ボールに集中する
②イメージトレーニングを行う
●ボールという一点に集中することで雑念がキャンセルされ、学習スピードが上がる
●イメージの働きでバックハンドの動きが脳内シミュレーションされる