本稿では、学校での勉強や受験の基礎となる学力を上げる勉強法を解説しています。おもに中学生、高校生を対対象としていますが、小学生以前の勉強にも有効です。
本文で詳しく説明しますが、学校の(テスト)成績が高くなるか低くなるかは試験勉強よりも前の段階で決まっていると考えられます。
勉強してその成果を得るためには、正しい方法で学ばなければなりません。特に本稿では、脳機能そのものを高めて勉強が得意になる方法を考えています。
中学生・高校生の成績は勉強を始める前から決まっている?
中学校や高校では各教科のテストが行われるとともに、テストの順位や偏差値が測られます。
このようなテストの成績は高校受験や大学受験にも繋がるもので、「成績を上げたい」と考える方も多いことでしょう。
しかしテストの成績は単純な勉強時間によって決まるわけではなく、正しい方法での勉強を続ける必要があります。
本章のポイントはこちらです。
Point
・テストの点数(偏差値)は勉強時間よりも「学力」で決まっている
・学力はおもに「読解力」と「思考力」の2つに分けられる
・教科書もテスト問題も文字で書かれているため、文字情報に慣れ親しむことが大切
各ポイントについて以下で詳しく解説していきますが、その前に「テストや偏差値とはそもそも何か?」という問いを考えておきましょう。自分が行っていることについて理解しておくことは大切です。
中学校・高校のテストとは何か?
そもそもテストとは、また偏差値とはなんでしょうか?
テストは「能力などを試したり、測ったりするためのもの」。日本語の試験にも同じような意味が含まれています。
また偏差値は大まかに言えば「平均を50とし、平均からの距離を数値化したもの」です。点数そのものではなく、他の受験者との比較によって計測されるものです。
まずテストについてですが、言葉通りに見れば現時点での学習度を測るためのものですから、点数自体に意味はありません。「今は○○は理解できているけれど、△△は苦手だな。」のように、テストによって計測し、今後の学習の目安にします。
また偏差値は周囲との比較で、必要があるのかどうかも疑問があります。本人が身に付けた知識が重要なのであって、他人との比較を強調するべきではないと考えられるからです。
平均点くらいは受験者全体に伝えた方がいいでしょう(本人の点数だけではテストの難易度が数値化されないため)。
しかし偏差値という人との比較を数値化したものを中学生、高校生に繰り返し意識させることは、メリットよりもデメリットの方が大きいのではないかと思われます。
以上は一つの考え方にすぎません。テストのスコアや偏差値といったものについて考え直してみると、常識が正しいわけではないことに気が付きます。
もちろん、テストは成績が記録されますし、受験にも関わることですから、点数そのものが気になる気持ちも理解はできます。しかしテスト用紙に書かれたマルや数字(点数)が物理的に人生に影響を及ぼすことはありません。
自分の目的に合わせて適切な距離で付き合うのがいいでしょう。
テスト勉強の基礎となる「学力」とは?
始めに「学校におけるテストの成績は、試験勉強の前から決まっている」という点に触れました。それは言い換えると、「国語や数学などの科目を学ぶための力=学力」によって、試験勉強の成果が大きく左右されるという意味です。
このことは経験的に語られているだけではなく、データによっても示されているところです。
では学力とは具体的にどのようなものでしょうか?
学ぶ力というと勉強に限らずスポーツや音楽なども含まれますが、今回は国語や数学などの学校の教科の内容を身に付けることを中心として考えます。
教科の内容を学ぶ意味での学力は主に以下の2点が重要です。
・【読解力】文章の内容を正確に理解する力
・【思考力】物事を筋道立てて考える力
もう少し詳しく見ていきましょう。
学力の基礎は“読解力”にある
第一に読解力です。
読解力というと国語で必要とされる能力に思われそうですが、実際にはすべての教科に通じる大切な資質です。
読解力がそれほどまでに重要な理由は、人が知識を得るために文字情報が不可欠だからです。もちろん音声や映像を使って学ぶ方法もありますが、勉強の基本はあくまでも文字が中心であることには変わりありません。
数学や理科のような理系と言われる科目であっても、教科書は文字で書かれた内容であり、テストの問題も文章で出題されます。
実際ある調査では、基本的な読解力と学力偏差値とが強く関係していることが示されています。
読解力が身に付いている学生は文章を読めば分かるわけですから、勉強は進みやすいでしょう。一方で文章に慣れていない学生の場合、時間をかけて勉強しても成果が出にくいと考えられます。
“思考力”があれば応用が利く知識が身に付く
思考力にはいくつかの面がありますが、勉強で大切なのは筋道立てて整然と考えることができる、論理的な思考力です。
イメージとしては他人に説明ができるくらいにまで、頭の中で整理して考える力のこと。整理するためには一段高い視点から物事を見つめる必要がありますから、視点の高さもポイントです。
例えば数学の公式(計算方法)などは、そのまま暗記していても使いこなせません。
・公式が意味しているのはどういうことなのか?
・どのような問題について使うことができるのか?
以上のような点を自分の中で考え、整理しておけば、問題に合わせて柔軟な対応ができます。
「自分で考えてクリアに整理するなんて、難しそう…」と思われるかもしれません。しかし、これは人間の脳に潜在的に備わっているもので、慣れれば誰でもできるようになります。
始めのうちは難しく感じますが、自転車と同じで考えることも繰り返しによって上手くなっていきます。
次章で紹介する簡単なトレーニングを続ければ、初めて学ぶ分野でも立ちどころにそのエッセンス(本質)をつかめるようになるでしょう。
中学生・高校生が本物の学力を手に入れる最強の勉強法
前章では「読解力」と「思考力」が勉強の基礎として必須であることを確認しました。
そして本章では、中学生、高校生も簡単に取り組める脳のトレーニング方法をご紹介します。
本章のポイントはこちら。
Point
・勉強が得意になる『学力アップ3つのコツ』を習慣化する
→ 「ポジティブな言葉を使うこと」「読書をすること」「疑問を持って考えること」
・自転車の練習のように、脳は繰り返しによって自動的に強化されていく
・日々使っている言葉を変えることで意識が変わり、行動が変わる
・読書は人類の知的な空間にアクセスできる最高の学び
学力向上のトレーニングは読解力と思考力アップを中心としていますが、効果は多岐に渡ります。
・勉強のモチベーション(やる気)アップ
・問題解決能力が上がる
・他人の価値観ではなく、自分の意志で人生を生きる力が身に付く
しっかりと継続することで以上のようなメリットが現れてくることでしょう。
勉強が得意になる!『学力アップ3つのコツ』とは?
勉強が得意になる『学力アップ3つのコツ』はこちらです。
①ポジティブな言葉を使うこと
②読書をすること
③疑問を持って考えること
どれか一つを実践するだけでも効果がありますが、3つすべてを行うことでさらに効果が上がります。「ポジティブな言葉によって行動が促されて読書が進む」といった要領です。
3つのコツでなぜ学力が上がり、勉強が得意になるのか。その原理を理解していきましょう。
ポジティブな言葉で勉強のやる気アップ
日ごろからポジティブな言葉だけを使うことで、勉強はもちろん他の様々なことに対しても意欲を高めることができます。
「言葉を変えるだけで、勉強ができるようになるの?」と感じる人もいるかもしれません。しかし人間は言葉から現実と同じような影響を受ける生き物です。
・人間は小説を読んで涙を流す
・他者からの言葉で喜んだり、悲しんだりする
上のような例からも言葉が私たちに力を及ぼしていることが分かります。ポジティブな言葉はプラスの効果が、ネガティブな言葉にはマイナスの効果があるでしょう。
私たち人間の体を動かしているのは脳の働きです。つまり「勉強をする」「スポーツの練習をする」といった行動は脳からの指令によって実現されるということです。
勉強のやる気問題は誰もが悩むことですが、やる気を引き出すためには司令塔である脳のメカニズム(仕組み)に合った方法が不可欠です。
皆さんが使っている言葉を見つめ直してみてください。
始めからすべてポジティブな言葉にするのは難しいので、少しずつネガティブな言葉を減らすところから始めましょう。次第に慣れてきて肯定的な言葉で自分を導いていくことができるようになります。
読書で勉強に不可欠な読解力が磨かれる
読解力が勉強をするために必要不可欠な基礎であることは先ほど書いた通りです。重要なのは「どうすれば読解力が身に付くのか?」ということですが、答えはシンプルで、繰り返し文章を読んで慣れること。
つまり、読書を習慣的に行うことです。
本のジャンルは問いません。小説やライトノベルなど、勉強に関わる内容ではなくても読解力が身に付きます。
「読解力を身に付けよう」と考える必要はありません。
習慣的に本を読むことで脳は自然と文字情報を理解することに慣れていきます。この文字情報への慣れが学力向上に直結するのです。
また物語を通じて知識が身に付くことも期待できます。自分で直接には体験できないことを、言葉を通して感じることができるのです。
優れた小説では綿密に物語の世界観が練られているため、想像の上での仮想体験も充実することでしょう。
3ヵ月ルールで脳を目覚めさせる!
読書をする習慣がない人にとっては、活字を読むことを難しく感じる場合もあります。
脳には3ヵ月ルールともいわれるものがあります。これはある物事を始めてから、3ヵ月を目安に脳が学習して成果が表れるという法則です。
脳の学習は一つずつ直線的に進むのではなく、カーブを描くように進みます(学習曲線)。
このとき本人は「始めのうちは成果があまり感じられないが、継続することで突然成長の波が訪れる」といった感覚になります。
読書も始めのうちは慣れないものと思って、少しずつでも継続することを頭に置いてください。脳は繰り返しによって新しいネットワークを築き上げ、機能を向上していきます。
このとき学力アップの1つ目のコツ「ポジティブな言葉を使うこと」を利用すれば、読書の継続がしやすくなるでしょう。
「読書は楽しい」
「本を読むことが必ず自分にプラスになる」
と肯定的な言葉を唱えることで、脳はプラスのイメージを受け取ります。言葉は声に出すのでも、心の中でもOKです。
疑問を持って考えることで頭が良くなる!
『学力アップ3つのコツ』の3つ目は「疑問を持って考えること」。
ポジティブな言葉を使い、また読書の習慣が身に付けばかなり勉強の内容が理解しやすい状態になります。
自分の頭で考えることで、知識を整理してその本質を理解する力が鍛えられます。さらに重要なことは、自分の人生を生きるための力が養われるということです。
ここまで何度か触れてきた通り、脳は繰り返しによって学習します。自分で考える力もまた、何度も考えることで強化されていくのです。
先ほどにも挙げたポイントをおさらいしておきましょう。
・説明ができるくらいに整理する
・高い視点でとらえてみる
繰り返しのポイントは「失敗は成功のプロセスである」ということ。始めからクリアに思考が整理できなくても全然OK、気にせず続けてください。
わざと失敗する必要はありませんが、あるスキルが上達する過程においては試行錯誤が不可欠です。自分で考える力を養うときにも、間違いは気にせず自由に、気楽に考えてみましょう。
自転車が何度も転びながら上手くなるように、何度も練習することで上手くなります。
自分を考えることで、自分の人生が始まる
学力アップのコツ「疑問を持って自分で考えること」について、もう少し深めていきます。
まず“疑問を持つ”という点。
「皆は○○と言うけれど、それは本当に正しいだろうか?」
このように考えることで、自分の視点が生まれてきます。定期テストや受験の問題は正解が一つに決まるタイプのものがほとんどで、言い換えれば他人が用意した正解を受け入れる問題でもあります。
もちろん計算の結果、明らかに一つに決まる問題もあります。しかし、私たちが生きる上で出会う問題は正解が用意されているわけではないでしょう。
問題の指示通りに他人が用意した正解を答えるだけでは、自分で判断するチャンスがどこにもありません。そこで他者の言うことを鵜呑みにせず、疑問を持って考えることが求められるのです。
なぜだろう?と疑問を持てば、一段上の視点から意見を見つめ直すことができます。
「○○大学がいいというけれど、なぜだろうか?」
「なぜ学校に行くのだろうか?」
自分の中で説明がつくように、何度も何度も考えることを続けます。このとき知識が役に立ちます。
暗記しただけのものではなく、他の知識と繋ぎ合わせたりして物事を考えるための材料となっていきます。点と点が繋がり、線として結ばれていくような感覚です。
このようにして身に付いた思考力は勉強に役立つことはもちろん、人生で直面する問題を乗り越えるための知性にもなるでしょう。
また人生の多様な問題に対しても、高い視点で考えることが役に立ちます。
立体迷路の中にいることを想像してみてください。
迷路の中で目の前の道を見つめても出口は分かりません。しかし、高い視点から迷路を見渡せる人は違います。
賢明な判断を導くための鍵は、高い視点から見つめることです。
まとめ
●勉強の基礎となるのは「読解力」と「思考力」
●文章を正確に理解する能力があるかないかで、勉強の成果が変わる
●『学力アップ3つのコツ』を実践しよう
①「ポジティブな言葉を使うこと」…肯定的な言葉は気持ちを変え、行動を変える
②「読書をすること」…読書で読解力が上がり、想像の世界で豊かな経験が得られる
③「疑問を持って考えること」…高い視点で考えることで知能が上がる。自分の人生を生きることにも繋がる
●闇雲に勉強するのではなく、正しい方法で勉強をすることで人生が豊かになる