本稿では、受験勉強で身につけた力を本番で発揮する方法を説明しています。
受験と言えば本番に向けての勉強が重視されるものだと思います。試験そのものは長くても数日のものですから、当日に至るまでの勉強を重視するのは当然でしょう。
しかしせっかく勉強をするわけですから、試験の日に自分の力が最大限に出せる方が良いですよね。試験本番で力を出すための方法とはどのようなものでしょうか?
受験本番で力を出す方法
受験本番で力を出すための方法は「メンタルリハーサル」です。
メンタルリハーサルとは「頭の中で本番の様子を想像(イメージ)し本番で自分の力を発揮することを目指す方法」です。
・脳はイメージと現実を区別していない
・受験は数日の間の出来事だが、それまでの勉強の成果を引き出せるように準備する
具体的な方法は後で説明するとして、先にメンタルリハーサルの効果について説明していきます。効果をはっきりと理解しておくことでより実践がしやすくなるからです。
「メンタルリハーサル」の効果とは?
メンタルリハーサルで期待できるのは、本番をすでに経験済みの慣れ親しんだ状況だと感じられることです。人間は緊張すると、普段できていることも途端にできなくなることがあります。
受験そのものは数年に一度しか経験しない、日常からやや離れた出来事です。中学校、高校の3年間で勉強をして準備はできるものの、受験の空気そのものに慣れる機会はそう多くありません。
そこで利用したいのがメンタルリハーサルというわけです。受験そのものは現実には経験していなくても、頭の中でのシミュレーションは何度でも経験することができます
人間の脳は頭で思い描いたイメージと、物理的な現実とを明確に区別していません。
ホラー映画を見ると、それがフィクションだと知りながらも恐怖を感じ心拍数が上がります。現実の体が反応しているわけですから、本人の意識とは関係なく、脳にとってリアリティのあるイメージは現実なのです。
物理的な制約を受けない自由なイメージの世界が、現実の体に影響を与える。これが人間の脳が持っている無限の可能性に繋がっていると考えます。
入学試験に合格するためにはそのための勉強が大事ですが、イメージの働きによって勉強の成果を十分に発揮することができるでしょう。
メンタルリハーサルを行うことで、一度しかない受験本番の場面を何度も経験するような効果が期待できます。実力を発揮するためには、もちろんそれまでに勉強をしておく必要はあります。
しかし、受験日までのプロセスで勉強を積み重ねていればこそ、本番で緊張して力が出せないということは極力避けたいところです。
「コンフォートゾーン」を理解しよう
自分の慣れ親しんだ快適な空間のことを「コンフォートゾーン」と言います。
人間は「コンフォートゾーン」の中でしか高いパフォーマンスを発揮できません。勉強であれスポーツであれ、自分にとってファミリアな空間でのみ、人間は高いパフォーマンスができます。
コンフォートゾーンから離れると途端に居心地が悪くなり、普段ならば考えられないようなミスをしてしまったりするものなのです。
コンフォートゾーンについて、いくつか具体例を通して理解していきましょう。
「人前でのスピーチ」などはコンフォートゾーンの分かりやすい例の一つです。
普段の友人との会話はすらすらと言葉が出て来て会話も弾みます。ところがある日、大勢の人の前でスピーチをすることになったとしましょう。
ステージの前に立ち、聴衆の視線を一点に集める中で話そうとすると、声が上ずったり言葉に詰まったりすることがあります。
このとき本人の「言葉を話す能力」は変わっていません。慣れ親しんだ空間から離れると、能力が出せなくなる例の一つです。
スポーツにおける「ホーム」と「アウェイ」も同じ理屈です。
ホームはチームの地元のことで、アウェイは相手チームの地元のこと。試合の時に自分たちを応援してくれるサポーターの数も自然と違ってきます。
プロのスポーツ選手であっても、ホームの試合の方がアウェイの試合よりも良いプレーができます。
私たちはコンフォートゾーンの中にいる時、高いパフォーマンスができる。しかしコンフォートゾーンの外に出ると、力が出すことができなくなる。
普段と違う場所で力を出すためには「本番を普段と同じ慣れ親しんだ空間=コンフォートゾーンにする」しかありません。しかし「これは慣れ親しんだ空間だ…」と頭で考えるだけでは不十分です。
そこで重要になるのが「臨場感」。実際に体験しているかのようなありありとしたイメージを思い描きます。
一時的に思うだけではなく、脳が本気で確信している状態を作り上げます。
受験に使えるメンタルリハーサルの方法
試験本番で力を出すためには「本番を慣れ親しんだ空間だと感じられること」でした。本章ではメンタルリハーサルの具体的な方法を確認していきましょう。
メインとなるのはメンタルリハーサルですが、別の方法も合わせてご紹介しておきます。
・受験本番でリラックスして回答している自分をリアルにイメージする
・リアルなイメージは、現実に体験するのと同じ効果がある
受験で力を出すための方法は以下の2つです。
①受験に似た状況を何度も経験する
②受験のメンタルリハーサルを行う
順番に見ていきましょう。
①受験に似た状況を何度も経験する
受験に似た状況を何度も経験すると、試験そのものに慣れて実力が発揮しやすくなります。
私立と公立の併願など、受験そのものを何度も受けることでも慣れが感じられるでしょう。とは言え試験は年ごとに回数が決まっているので、繰り返し受ける訳にはいきません。
そこで、受験本番に似た場面を経験するようにします。
受験に似ている状況とは例えば模試などです。
模試はそもそも「模擬試験」の略称で、本番に似た環境で試験を受けることができます。試験問題が似ていることはもちろん、受験本番と同じ会場で受けることもあります。
学校で行う面接練習なども、同様の効果を狙っているのでしょう。質問に対する答えを考えること以上に、面接の雰囲気をシミュレーションする狙いが大きいはずです。
こちらの方法は、実際に受験の状況が体験できるため効果は期待できます。問題点があるとすれば、以下のような点。
・好きな時にいつでも実践できる訳ではない
・実践可能な回数に限りがある
これらの問題点を踏まえて、お薦めしたい方法が「メンタルリハーサル」です。
②受験のメンタルリハーサルを行う
受験の本番で力を発揮するために「メンタルリハーサル」を行いましょう。試験本番を「自分が慣れ親しんだ空間=コンフォートゾーン」だと感じられれば、パフォーマンスが上がります。
受験のメンタルリハーサルの方法は簡単です。
「自分が受験の本番で落ち着いてスラスラ問題が解けているところをリアルにイメージする」
頭の中で何度も受験の場面をイメージすることで、何度も実際に体験したかのような効果が得られます。
「リアルに」イメージするというところがポイントです。イメージで重要なのは、「臨場感」。
まるでいま自分が本当に体験しているかのように、鮮明にイメージすることで効果が上がります。
自分が訪れたことがある試験会場なら記憶にあるのでイメージがしやすいでしょう。高校見学やオープンキャンパスなど、志望校に訪れる機会はなるべく活かしましょう。
実際に足を運ぶことで、会場が自分のホームだと感じやすくなります。イメージをする時にも現に訪れた場所の方がリアルに思い浮かべることができます。
試験会場が一度も行ったことがない場所であれば、資料やインターネット上にある映像を利用しましょう。
写真などをもとに志望校の会場で試験を受けているところをイメージします。そうすると試験会場を何度も訪れた馴染みの場所として脳が認識します。
写真などをもとにしたメンタルリハーサルはオリンピック選手なども使っている方法です。初めて訪れる海外の会場での競技のとき、競技場の写真を見てその場所でのパフォーマンスをイメージします。
頭の中で思い描くだけで、本当に受験本番で力が出せるようになるのでしょうか?
実は、脳は現実とイメージを区別しません。
映画を見ている時にはフィクションだと気が付いていながらも感動したり、恐怖を感じたりします。映画で涙を流したり実際に心臓の鼓動が速くなったりということがあります。
そのとき脳が臨場感を感じている世界が私たちにとっての現実です。
受験本番のイメージに臨場感を感じることができれば、それは実際の体験と同じものとして脳には感じられます。何度も繰り返しシミュレーションを行うことで、何度も経験した出来事として準備しておくことができるのです。
あまり難しく考える必要はありません。リラックスして気楽に取り組んでみてください。
今回紹介した方法はスポーツの試合や面接、プレゼンテーションなどにも使えます。ぜひご活用ください。
まとめ
●人間は「コンフォートゾーン」=「慣れ親しんだ空間」の中でのみ能力を発揮することができる
●受験本番で力を発揮するには、受験をコンフォートゾーンにする
●受験本番を慣れ親しんだ空間にする方法
①受験に似た状況を何度も経験する
②受験のメンタルリハーサルをする
●受験を脳内で何度もリアルにシミュレーションすると、本番で落ち着いて力が出せる