本稿では、英語のリスニング勉強のコツを解説しています。
学校のテストや英検、TOEICなどの英語系資格試験において必須となるリスニング。リスニングを攻略するためには、「リスニングのスピードに付いていける理解力」と「英語の音をキャッチできる音声面」の両方を鍛える必要があります。
今回ご紹介する勉強法は試験の解法テクニックなどではなく、人間の脳が言葉を学習するメカニズムに沿った勉強法です。
英語のリスニング勉強のポイント
英語の勉強で特に学生が苦手と感じるのが「リスニング」ではないでしょうか。
英語を勉強する際に重要なポイントは「英語は学校の科目である前に言葉であること」です。単語や文法の暗記ではなく、母国語と同じ言葉としての学習を重ねることで、確実に英語の力は伸びていきます。
本章では英語のリスニング勉強のポイントを押さえておきましょう。
Point・脳は繰り返しによって自動的に神経ネットワークを構築して学習する
・英語のリスニングが苦手に感じる最大の理由は「リスニングに慣れていないこと」
・リスニング能力には「言語面」と「音声面」の2つの側面がある
それでは詳しい内容を確認していきましょう。
英語を学習する脳のメカニズム
脳が学習する基本は「繰り返し」です。自転車に乗る時のように反復練習を行うことで次第に物事に慣れていきます。
勉強であれスポーツであれ、繰り返し練習を積むと脳内で新しい神経のネットワークが作られ、処理が上手くなります。
英語を含めた言葉の学習も基本は同じです。
英語の文章を読み、英語の音声を聴く。これを繰り返すことで脳内では英語を処理するためのネットワークが自然と作られていきます。
このことは、皆さんの母国語(日本語)が周囲の人の会話を聴くことで自然に身に付いていることからも分かります。
英語のリスニングが上達するための勉強も、リスニングを繰り返すことによる脳の学習が基本です。
英語のリスニングが苦手な理由はリスニングに慣れていないから
学校の教科の中でも、英語のリスニングを苦手とする人は多いようです。
英語のリスニングが難しく感じる最大の理由は「リスニングに慣れていないこと」です。
学校での英語の授業は4技能(話す・聴く・読む・書く)のバランスとは言うものの、実際にはリーディング=文章の読解に偏る傾向があるでしょう。
リスニングそのものの勉強時間が短ければ、リスニングの力が伸びないのは当たり前のことです。
これを改善する方法はシンプルで「リスニングの量を増やすこと」。
英語のリスニング力を向上するにも、まずは量をこなすことが不可欠です。学校の授業でリスニングの時間が短い場合は、自主学習で意識してリスニングの量を増やしてみましょう。
英語の音を聴くという刺激によって、脳はどんどん英語の音声のための処理回路を作ってくれます。
英語のリスニングに必要な2つの側面
冒頭でも触れた通り、英語のリスニング力には以下の2つの側面があります。
①言語面:英語を英語のまま理解できる
②音声面:英語の音に慣れている
上記の2つについて順番に確認していきます。
ポイント①言語面:英語を英語のまま理解できる
リスニングでは音声のスピードで理解することが求められますから、英語を直解する能力が必要です。
試験時間があるとは言え、英文を読む時には自分のペースで進めることができます。しかしリスニングはそうはいきません。
リスニングの内容を理解して問題に回答するには、英語を英語の語順で理解する、直解力を身につけましょう。
「英語の長文読解はできるのに、音声になると分からない…」
このように感じる場合は、文章を日本語に訳して理解しているのかもしれません。読解問題、リスニング問題ともに、英語のまま理解できるようにトレーニングを行いましょう。
具体的な方法は次章で解説しています。
ポイント②音声面:脳が英語の音に慣れていること
英語の音声は日本語とは異なる周波数帯になると言われています。
リスニングの音声面とは「英語の音を言葉として脳がキャッチすること」です。英語を音声としてキャッチできなければ、知っている英単語でも聴き取れなかったりします。
また、英語には音の「崩れ」と言われるような特徴があります。日本語の場合は五十音が一音ずつ対応していますが、英語は「前後の音の繋がり」や「音の消失」があります。
例えば「an apple」という言葉は文字で見るとすぐに意味が理解できます。しかしこれをカタカナの「アンアップル」という音として認識していると、聴き取るのが難しくなります。
実際には「an」「apple」という2つの単語の音が繋がったり、発声されない部分があったりするからです。
リスニングでは「聴き取れない」とは言いますが、音としては聴こえています。音は聞こえているけれど、言葉として上手く処理できていない状態が英語が聴きとれない。
脳にはフィルター機能があり、情報の取捨選択が行われています。そのため脳が重要ではないと判断した音はカットされてしまいます。
英語が聴き取れるようになるためには、脳が音声を言葉としてキャッチ(認識)することが不可欠です。
母国語での会話でも、対面している相手以外の周囲の会話は耳に入ってこないものです。これは脳が不要な会話を自然にカットしているからです。
英語を言葉として脳がキャッチするためにはリスニングのトレーニングをして、その音声が重要な情報だと脳が認識するようにしましょう。
脳のメカニズムを活かして英語のリスニングが得意になる勉強法
前章で英語のリスニングは量をこなして、リスニングに慣れること。またリスニングには「言語面」と「音声面」の2つの側面があることを確認しました。
本章では、言葉としてのリスニング力が伸びる勉強法を見ていきましょう。理論を理解するだけでなく実践を行うことで、脳内に英語回路がどんどん強化されていきます。
Point・日本語に訳さず英語に触れることで、脳は英語を言葉として学び始める
・リスニングの勉強は英語を英語のまま理解するトレーニングを行う
・音読を繰り返すことで脳内では日本語なしで英語が処理されていく
・英語に意識を向けてリスニングを繰り返すと、脳は自然に英語の音声を言葉としてキャッチし始める
リスニング力を上げるための勉強のコツは、こちらの3点です。
①英文を音読する
②日本語に訳さずにリスニングをする
③スクリプト(本文)と照合しながらリスニングをする
①英文を音読する
音読は英語の勉強法として大変ポピュラーなもので、リスニング力の向上にも効果的です。
音読の場合は特にリスニングにおける「言語面」のトレーニングになります。
つまり英語を英語の語順で、日本語に訳さずに直解する練習です。
英文を繰り返し音読してスラスラ読めるようになるまで練習することで、脳内は英語を日本語に訳すことなく流れ込んでくる状態になります。
前章で確認した通り、脳は繰り返しによって自然と神経ネットワークを強化してくれます。
始めのうちはスムーズに理解ができなくても、音読を繰り返すことで英語の理解力が向上していきます。
英文がスムーズに音読ができ、音読のスピードで英語のまま理解ができる。こうなるとリスニングのスピードにも対応ができるようになります。音読によるリスニングへの効果は驚くほど大きいものがあります。
文章を声に出して読むことで、「スムーズに読めない箇所」「リズムが掴めない箇所」などが分かります。
音読がスムーズにできるようになることは、頭の中で英語がスムーズに処理できている目安になるでしょう。
長文読解にも有効なトレーニングですので、ぜひ英語学習に音読を取り入れてみてください。
②日本語に訳さずリスニングをする
リスニングの勉強ですから、実際に英語の音を聴きましょう。
自転車に乗るために何度も自転車に乗るように、英語を聴きとるためには何度も英語を聴かなければなりません。
音読の際に行ったように、頭の中で日本語に訳さないようにしましょう。しっかりと英語の音に集中して、英語を英語のまま理解するよう繰り返し練習します。
新しい言葉を学ぶ時には、母国語(既に学んだ言葉)を使わないことが効果的だと考えられます。脳の働きとして「抑制」と呼ばれるものが指摘されています。
例えば理性と感情のように、どちらか一方が活性化していると、一方が抑えられるという場合があります。外国語を学ぶ際に日本語を使うと、脳が新しい言語を学ぶことができない可能性があります。
英語を聴くときには、次を予想しながら音声を聴くとさらに効果的です。
始めは次が予想できませんが、音、単語、文章…とより大きい単位での予想ができるようになってきます。
予想している時は脳内で能動的に英語を組み立てている状態です。
聴こえてくる前に次の音や文章が予想できるということは、自分で英語の出力=アウトプットできているということになります。
③スクリプト(文章)と照合しながらリスニングをする
リスニングで流れてくる音声をスクリプト(文章)と照らし合わせながら英語を聴きます。この方法では文字情報と音声情報を結び付けながら聴くことができます。
「視覚」と「聴覚」の2つの五感に働きかける訳ですから、その分学習の効果も高まります。
音声で文章を読み上げてくれている状態なので、リーディングの学習効果も高いトレーニングです。
文字と照らし合わせることで、英語の音声を一字一句漏らすことなく確認していくことができます。
継続して行うことで、自分の中の音声イメージと実際の発音とのズレを埋めることができるでしょう。
④音声のシャドーイングを行う
音読やリスニングを行ってキャッチできる音が増えてきたら、シャドーイングを行いましょう。
シャドーイングは発話された音声を聴きながら同時にリピートする練習です。
「聴く」と「話す」を同時に行うので始めは難しく感じるでしょう。
スピードは遅めの英語からスタートして、徐々にレベルアップしていきます。
英語の音声を真似して発声することで発音のチューニングができ、聴き取りの精度もさらに上がります。
英会話の練習としてもお薦めです。
英語のリスニング問題〈解法テクニック〉
ここまでは英語力そのものを向上させることでリスニングに対応する勉強法を解説しました。
それを踏まえた上で、最後にリスニングの問題に回答する際のテクニックもご紹介したいと思います。
①リスニングの選択肢が書かれている場合は目を通しておく
②疑問詞(5W1H)にフォーカスする
③聴きながら選択肢を選別する
以上の3点です。一つずつ確認していきましょう。
①リスニングの選択肢はキーワードに目を通しておく
リスニングでは選択肢が音声で与えられる場合と、あらかじめ用紙に書かれている場合とがあります。
選択肢が書かれている場合、先にキーワードに目を通しておきましょう。
試験中に選択肢を見る時間がなければ、音声を聴くことを優先してください。
正解となる文章以外は誤りですが、本文の内容に関係する単語が散りばめられていることが多いです。
会話や英文のテーマを先に掴んでおくことで、内容の理解がスムーズになることでしょう。
②疑問詞(5W1H)にフォーカスする
英語には疑問詞と呼ばれる品詞(単語の種類)があります。
疑問詞は5W1Hとも呼ばれ、それぞれ文章全体の意味を大きく決める働きがあります。
疑問詞が使われる質問を整理すると以下のようになります。
・「When」…「いつ」。時間や日付を問う問題。
・「Where」…「どこで」。場所を問う問題。
・「Who」…「だれが」。人物を問う問題
・「What」…「なにを」。物や出来事を問う問題。
・「Why」…「なぜ」。理由を問う問題。
・「How」…「どのように」。手段や程度を問う問題。
以上のように、疑問詞を聴きとるだけで質問の意味を掴むことができます。
③聴きながら選択肢を選別する
音声を全て聴き終わってから回答するのではなく、聴きながら選択肢を眺めて選別しましょう。
こちらはある程度練習をしないと難しいテクニックです。
リスニングからシャドーイングまでしっかりと練習を積むとコツが掴めてきます。
TOEICのリスニング問題などは一つの英文に対して複数の設問があります。
この場合、音声をすべて聞いてから問題を解いていては恐らく間に合いません。
そこで、正解が分かった瞬間に先に選択肢を押さえておくのです。
聴きながら読むとどうしても理解度はやや薄くなります。
リスニングの音声を聴くことを優先しながら、選択肢を眺めるようにして選別しましょう。
聴きながら解けなかった問題は後回しにします。
この方法を使うと内容を覚えておく必要がなく、聴こえた瞬間に回答ができます。
また回答時間中に次の問題のキーワードに目を通すことができ、リスニング問題全体のスコアアップに繋がります。
まとめ
●リスニングを繰り返し行うことで脳は自動的に学習する
●学習時間が短かったり、訳読に慣れているとリスニングは難しく感じられる
●英語のリスニングの2つのポイント
・「言語面」=英語が英語のまま分かること
・「音声面」=脳が英語の音にチューニングされていること
●英語のリスニング勉強法
①英文を音読する
②日本語に訳さずに英語を聴く(次を予想しながら聴く)
③スクリプトと照合しながら英語を聴く
④シャドーイングを行う
●リスニングの解法テクニック
①リスニングの選択肢が書かれている場合は目を通しておく
②疑問詞(5W1H)にフォーカスする
③聴きながら選択肢を選別する