テスト勉強で「ブレイクスルー」を引き起こす方法とは?

テスト勉強で「ブレイクスルー」を引き起こす方法とは?

本稿では、テスト勉強に役立つ学習のメカニズムを解説しています。

今回特に注目したいのが「ブレイクスルー」と呼ばれるものです。ブレイクスルーは物事が急激な発展・成長を遂げることを意味します。

勉強でのブレイクスルーとはどのようなものなのでしょうか?また、ブレイクスルーを引き起こす方法は何でしょうか。

 

勉強は「ブレイクスルー」で急激に進む!

学校での定期テストや、受験に向けて行う勉強。いずれの場合についても勉強は効率よく行うことが大切です。

時間当たりの効果が高い学習を行えば成績は上がりやすい。その反対に、効果の低い勉強法を取っていると、勉強時間を長くしても成績は上がりにくくなるでしょう。

勉強の効果に関わる「ブレイクスルー」の理論を学びましょう。

 

本章のポイントはこちらです。

Point

・勉強は時間に比例するのではなく、急カーブを描くように進む

・継続の先に訪れる急激な成長を「ブレイクスルー」と呼んだりする

・学習をしているのに効果が出ない期間を「サイレントピリオド」と呼ぶ

・勉強は、効率の高い方法で継続することが大切

 

それでは詳しい内容を確認していきましょう。

 

テスト勉強はカーブを描いて進む

勉強をしている時には、継続しているうちに徐々に身に付くというイメージがあるかもしれません。

しかし実際は違います。

 

勉強は「継続しているうちにある日突然、爆発的に成長する」という経過を辿ります。

この学習の成果が突き抜けるように現れることを「ブレイクスルー」と呼んだりします。ブレイクスルーが訪れた瞬間というのは、はっきりと体感できることがあります。

 

勉強は時間に比例した一定のスピードで進むわけではありません。人間が何かを学ぶ時には、基本的に直線ではなく曲線を描くように進みます。

学習の進み方を表したグラフは「学習曲線」と呼ばれるS字カーブになります。


学習曲線は勉強だけに当てはまる訳ではなく、スポーツや音楽などでも同じ経過を辿ります。これは「ある物事が脳内で学習される」という際に共通して見られるプロセスです。

 

勉強を継続してサイレントピリオドを乗り越えよう

学習曲線を知識として知っておくことにはメリットがあります。それは、学習の効果が現れるまでの継続がしやすくなることです。

勉強がカーブを描いて進むことを知らなければ、途中でやめてしまう原因になりかねません。

 

学習の効果が感じられない始めの期間は「サイレントピリオド」と呼ばれます。サイレントは「静かな」、ピリオドは「期間」の意味ですね。

 

サイレントピリオドでは頭の中(無意識)では学習が進んでいるのですが、本人の意識の上では効果が感じにくい状態になります。この沈黙の期間を越えて学習を続けると、それまで学んできたことが一気に繋がる時が訪れます。

このタイミングこそブレイクスルー。それまで学んできたことが統合され、突き抜けるような感覚で一気に学習が進みます。

 

勉強の成果が出ない理由の一つとして、サイレントピリオドの間にやめてしまうことが挙げられます。この期間は本人が勉強をしていても、はっきりとした効果が感じられません。

しかしサイレントピリオドを越えて勉強を継続することが出来れば一気に効果が現れます。

 

「効果が感じられない沈黙の期間」と、その後に訪れる「爆発的な成長=ブレイクスルー」

学習のプロセスを知識として知っておくことで、自分の現在地を正しく認識できます。その結果ブレイクスルーを引き起こすまでの継続がしやすくなります。

 

付け加えると、ブレイクスルーを引き起こすためには「効率」も重要な要素です。

効果が低い方法で学習をしている場合、それを継続しても爆発的な成長のカーブを体験することは難しいと思われます。

効率良く、継続する。これがブレイクスルーを引き起こすトリガーとなります。

 

勉強のブレイクスルーの瞬間に生まれる「ゲシュタルト」とは?

勉強を効率の良い方法で継続すると、ある日突然急激な成長が訪れる。このとき脳の中では何が起きているのでしょうか?

 

本章のポイントはこちらです。

Point

・ゲシュタルトが作られると学習が一気に進む

・ゲシュタルトは「部分と全体が双方向に繋がった全体像」

・点と点が結び付くように、個々の学習が結び付いたとき飛躍的に成長する

 

ブレイクスルーに深く関わるのはゲシュタルトという概念です。以下で詳しく見てみましょう。

 

勉強のゲシュタルト(全体像)が作る

ブレイクスルーが起こるとき脳内では「ゲシュタルト」が作られています。ゲシュタルトとは「一つ一つの部分が相互に繋がりを持つ、統合された全体像」のことです。

 

一般に使われる言葉でゲシュタルトのイメージをつかむとすれば、以下のようなものが参考になるでしょう。

 ・点と点が繋がり、線となる

 ・足し算ではなく掛け算

 ・1+1が3にも4にもなる

 

上に挙げたような言葉は経験的に使われているものですが、ゲシュタルトの考え方にピタリと符合します。勉強で学んだ一つ一つのパーツは単なる足し算ではなく、相互に結び付くことでさらに大きな「絵」が浮かび上がります。

 

説明を読むだけではイメージが掴みにくいかと思うので、以下に具体例を紹介しながら説明します。

 

小説

小説は一部分だけを読んでも深く理解することはできません。

文章の前後関係を合わせて、初めて大きなストーリー=全体像が理解できます。先に読んでいた文章が、最後まで読むことで「そういうことだったのか!」とより深く理解できます。

部分と全体が双方向に関係しています。ストーリーの全体像が見えることで、途中の場面もより分かりやすくなります。

 

また、言葉そのものをゲシュタルトと捉えることもできるでしょう。

「あいうえお」などの一つ一つの音素には意味はありませんが、これらを組み合わせることで文章になり、物語が描き出されます。

 

スクリーン(TVや映画など)

スクリーンは光の点の集まりによって一つの映像を映し出しています。

それぞれの点には色彩のうちの一つという情報しかありません。しかし点を組み合わせて一つの全体像として見ることで、個別の光の点には描かれていなかった「映像」が映し出されます。

光の点という部分の合計が、ただの足し算ではなく意味のある総体として立ち現れていますね。

 

ゲシュタルトが作られると一気に勉強が進む

小説やスクリーンの例から分かる通り、全体像=ゲシュタルトを描き出した瞬間、全く違うレベルに到達するのです。一つ一つの学びのピースがお互いに関係し合う大きな絵が浮かび上がるイメージです。

ゲシュタルトが作られる瞬間が一気に学習が進む瞬間=ブレイクスルーです。

 

積み立てられていく学習は、始めのうちは点を打っていくようなものです。打たれた点の量が一定量を越えた瞬間、点と点が線で結ばれます。

線で結ばれて立ち上がる全体像は点を足し合わせた合計よりも大きくなります。足し算ではなく掛け算と言われるような働きです。

 

勉強におけるブレイクスルーとゲシュタルト

ブレイクスルーゲシュタルトについて理解していきました。これらを具体的な勉強の例で考えてみましょう。

 

Point

・教科や単元はそれぞれ繋がっている

・別々に見えるものを統合して理解することで一気にレベルが上がる

・勉強のブレイクスルーは3ヵ月が目安

 

それでは具体的な勉強方法について解説します。

 

勉強に見られるゲシュタルト

例えば社会科の歴史と地理の両方を学ぶことで、片方の教科もより深く理解ができます。

人類が経験してきた過去の歴史と、地形や気候などは関係しているからです。

 

これは社会科に限ったことではありません。数学や物理などの教科についても同じことが言えます。

学べば学ぶほど全体像が作られ、個々の部分もがより充実した学びになります。

 

一つの教科の中でも全体像が作られれば、個々の単元の内容もより分かりやすくなります。そして教科を越えた学習を続けていれば、さらに大きなゲシュタルトが構築され、個々の教科もよりレベルアップします。

 

テスト勉強でブレイクスルーを引き起こす!

勉強を継続して行うことで、途中には全く感じられなかったような大きな知識の世界が開けてきます。学習がカーブを描くようなプロセスで進むことをあらかじめ知り、自分の中の道標としましょう。

 

これは自分の経験だけでは分かりにくいところがあります。始めた頃は効果が感じにくいため、体感的には「勉強をこれ以上続けても意味がない」と思いがちだからです。

 

個人差もありますが、一般にブレイクスルーが起こるのは学習開始から3カ月が一つの目安です。3カ月続けると突然学習が突き抜けるように進むというのは、分野を問わず共通しています。

ブレイクスルーがはっきりと体感できるとは限りませんが、学習が曲線を描くような進み方をすることは覚えておいてください。

 

ブレイクスルーを引き起こすテスト勉強法

学習を一定期間継続することで脳が全体像を認識し、ブレイクスルーを引き起こす。このような学びのプロセスは脳内で自然に行われることです。

しかし、本人の勉強法次第でゲシュタルトの構築はより行われやすくなります。本章では、ゲシュタルトを作るための勉強法をご紹介します。

 

Point

・学習のためには抽象化が不可欠

・高い視点で考えるトレーニングを行えば脳が抽象思考を始める

・抽象化能力が上がる=問題解決能力が上がる

・視点を上げるとブレイクスルーが起きる確率が上がる

 

脳内でゲシュタルトを生み出す勉強の鍵は「抽象化」です。テスト勉強を行う時にも、普段の生活の中でも高い視点で考えることを習慣化すると、脳が点を線で結ぶような思考を自然に行います。

 

テスト勉強には「抽象化」が不可欠

テスト勉強のためには抽象化ちゅうしょうかが欠かせません。抽象化を理解するために、抽象度ちゅうしょうどという概念を押さえておきましょう。

抽象度とは簡単に言えば「視点の高さ」です。物事を俯瞰ふかんで見る感覚で、大きなグループとして捉えます。

 

例えば、目の前に柴犬の「ポチ」がいるとします。抽象度を一段上げた視点でポチを見ると、「犬」になります。

犬の抽象度を上げると「哺乳類」。次いで哺乳類、脊椎動物、生物…とより広いグループで見ることができます。

 

「犬」の中にはチワワやブルドッグなどの様々な犬種が含まれますが、「四足歩行で歩きワンと鳴く動物」という共通の特徴がくくり出されたパターンとして認識されています。

 

抽象度を上げるとテスト勉強が加速する!

先ほどのブレイクスルーの説明をもう一度思い出してみましょう。

学習が急激なカーブを描くような軌跡を描くのは、点と点が結び付き、一つの意味ある絵としての全体像(ゲシュタルト)が作られるからでした。

 

物事の一部分ではなく全体を見るためには、高い視点で引いて見ることが必要です。

例えばナスカの地上絵と呼ばれる、地面に書かれた巨大な絵を理解するためには、上空から眺めるような視点が必要です。

地面でいくら子細に眺めたところでその絵の意味するところは浮かび上がらないでしょう。

 

社会科の地理と歴史について「いずれも土地・気候と人間の生活は双方向に関わり合う一つのもの」という視点を持つ。そうすると、地理と歴史の知識を別のものとして覚えているよりも、それぞれの分野についての理解も深まるわけです。

 

抽象度を上げるトレーニングで成績アップ

人間の脳には自然と抽象化する働きが備わっています。

例えば手書きの「あ」という文字は一つとして同じものはありません。同じ人が書いても毎回少しずつ変わりますし、見る角度によって全く違う形に見えます。

しかし脳が「あ」という文字に共通するパターンを学習すると、初めて見る筆跡の「あ」でも、反対側から見た「あ」でも、同じ文字として認識ができます。

 

「あ」という文字の例からも分かる通り、抽象化というプロセスは人間が学習するためには不可欠なものです。これは言い換えれば、抽象化が上手になると学習機能が上がるということになります。

抽象化のトレーニングを自ら行うことで、物事を理解する力が上がる。簡単に言うと頭がよくなるのです。

 

テスト勉強が加速する『抽象化トレーニング』

それでは抽象的な思考能力を上げるための、具体的なトレーニング方法をご紹介します。

 

 ・「抽象化する」:身の回りの物を抽象度を上げて(視点を上げて)見る

 ・「疑問を持つ」:「なぜ?」と疑問を持って、説明ができるように考える

 

以上の2つです。それぞれについて説明します。

 

「抽象化する」トレーニング

先ほど柴犬のポチについて、「ポチ」→「柴犬」→「犬」→…と抽象度を上げた視点でとらえました。これを身の回りのものについて次々と行っていきます。

目の前にスマートフォンがあれば「スマートフォン」→「電話」→「通信機」→「道具」→…のように、一つ前の物を含むより広いグループを思い浮かべます。

 

なぜこの方法が勉強に有効なのでしょうか?

例えば「スマートフォン」→「電話」と視点を上げたとき「通話を行う道具」という共通点を抽出して統合していることになります。抽象度を上げるということは、自然に物事を頭の中で整理するトレーニングになっているのです。

 

「疑問を持つ」トレーニング

物事について「なぜだろう?」と疑問を持つことを習慣化しましょう。すぐに他人に質問するのではなく、疑問を持って自分で考えます。 

 

例えば「偏差値の高い学校に進学するのがいい」と誰かから聞いたとします。この意見をそのまま鵜呑みにするのではなく、一度自分で高い視点から考えるくせをつけましょう。

 

 「なぜ偏差値が高い学校がいいのか?」

 「そもそも偏差値とはなにか?」

 「偏差値が重要ではないとすれば、なぜ多くの人は重要だと信じているのか?」

 

「偏差値が高い学校を目指す!」と思っている方が勉強ははかどるかもしれません。しかし偏差値が高い学校が自分にとって重要ではなかったとしたら、他人のモノサシで進路を決めてしまっているリスクがあります。

これまで常識として受けれ入れてきた価値観であっても、疑問を持って考えてみると案外おかしなことがあるものです。

 

物事に対して疑問を持って考えると、考える力がどのどん鍛えられます。自転車の練習のように、脳は繰り返しによって神経回路を構築して学習していくからです。

考える際には「説明がつく」ことが目安になります。他人に説明がつくように考えていけば、物事を整理してクリアに理解できるからです。

 

整理ができるとはつまり、高い視点から観察ができていることに他なりません。立体迷路の中にいる人には進むべき進路が見えませんが、上空から見ている人には最短ルートが見つけられます

高い視点から考えるトレーニングを続けることで、自分が進むべき道もクリアに分かるようになるでしょう。

自分で考えることで他人の価値観から自由になり、自分の人生を生きることができるのです。

 

まとめ

●学習は一歩ずつ進むのではなく、継続することである日突然急激に進む

●サイレントピリオド=学習をしていても効果が感じられない期間

●ブレイクスルー=一定の期間や量の学習を続けた後に起こる急激な成長

●ブレイクスルーの瞬間はゲシュタルトが作られた瞬間

抽象度ちゅうしょうど(視点)を上げると思考力が上がり、学んだ内容が統合されやすくなる

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