本稿では、テスト勉強・受験勉強を進めるための言葉の働きを解説しています。
私たちが使う日々使っている言葉は人生に大きな影響を与えます。勉強について度々耳にするのが「モチベーション(やる気)」についてですが、これも日々口にする言葉と密接に関係しています。
学校のテストや受験に活かせる言葉の理論とは、どのようなものなのでしょうか?
なぜ受験勉強に「セルフトーク」が重要なのか?
自分が使っている言葉のことを「セルフトーク」と呼びます。
セルフトークをコントロールすることがテストの成績を上げ、受験で志望校に合格することに大きく関わっています。それどころか、言葉は人生のあらゆる面を大きく左右すると言えるでしょう。
・言葉が人生に影響を与えているとはどういうことか?
・その働きを最大限プラスに活用するにはどうすれば良いか?
言葉の仕組みを理解して言葉を自分の味方につけましょう。
セルフトークと勉強
皆さんは「受験生に不合格を連想させるような言葉を使わない」という習慣を聞いたことがありませんか?
日本では古来より「言霊」と言われ、言葉にしたことは実現する力があると信じられてきました。キリスト教の聖書にも「はじめに言葉ありき」という一節があります。
現代人に「言葉に力がある」と信じている人は少ないかと思いますが、体験的に「ネガティブなことを言うのは縁起が悪そうだ」という感覚があるのでしょう。
私は言葉を一度口にするだけでそれが実現するとは思いません。
しかし私たちが習慣的に使っている言葉は、自分の行動や習慣、あるいは能力に多大な影響を与えていると考えられます。
直接行動に結びつかなくても言葉によって気持ちに変化が起きるということは、誰しもが体験的に知っていることでしょう。
他人が使う言葉一つで自分の気持ちが変わる。あるいは逆に、自分が使う言葉一つで他人の言葉が変わる。
日常の会話によって起きている現象を考えるだけで、言葉が現実に与える影響が実感できるでしょう。
テストや受験の場合には勉強という行動を起こさなければ変化は起こりません。しかし行動を引き起こす根源にあるのも心=脳の働きです。
言葉という脳の働きによって勉強という行動も変化すると考えれば、勉強面におけるセルフトークのコントロールの重要性が分かります。
人間にとって「言葉」とは?
「言葉」は人間の思考の中で大きな部分を占めています。思考には言葉以外にも「イメージ」や「感情」も織り交ざっています。言葉だけではないとはいえ言葉が担っている役割はやはり大きいでしょう。
人は言葉によって学び、言葉によって考えるものです。思考は現実の世界に大きな影響を与える可能性を持っています。
自分の手のひらの上に、新鮮なレモンが乗っているところを想像してみてください。レモンの表面の手触りを感じ、甘酸っぱい香りがあるかのように五感を使ってイメージします。
その新鮮なレモンを想像の世界の中で一口かじってみてください。レモンの酸っぱい果汁が口の中いっぱいに広がります。
レモンを食べるところを想像するだけで、だ液が出てきませんでしたか?リアルにイメージができたとき、物体としてのレモンがなくても人間の体はそれに「現実」と同じように反応します。
脳は「イメージ」と「現実」を区別しません。
本人が「レモンは現実にはない」と分かっていても、実際にあるものとして体が反応している。このとき想像上のレモンは本人にとってはもはや「現実」です。
リアリティのあるイメージは人間にとって現実。これが今回言葉を考える上での前提となります。
レモンは映像としてのイメージでしたが、言葉についてはどうでしょうか?言葉もまた人間にとっては現実と同じような影響力を持つものです。
人は小説を読んで涙を流すことがあります。小説を読む人の目の前にある現実世界は紙に印刷された文字があるだけです。
しかし本に書かれた文字内容が頭の中でリアルに感じられた時、小説の世界は本人にとっては「現実」です。涙を流すということは、体も現実として反応しているということです。
また他者からの一言で大いに喜んだり、深く傷ついたりします。人が放った言葉は「空気の振動」でしかありません。
しかし言葉が表す情報をキャッチしたとき、私たちの心はそれが現実の出来事のような影響を受けるものです。
以上のような言葉の力は私たちが日常的に経験していながら、あまり意識していないことです。自覚の有無にかかわらず、人間にとって「言葉」は「現実」です。
人間にとって現実が脳によって作られた情報であり、脳内の情報処理の多くを言葉が担っている以上、仕組みとして自然なことなのです。
現にこの文章をお読みの皆さんは、周囲の状況とは別の、言葉によって表現された世界の中にリアリティが移っていたはずです。
言葉は人間に大きな影響を与えている。言葉は人間にとって現実に等しい。
それほど言葉が重要であるなら、ぜひプラスに使いたいですよね?テスト勉強や受験勉強に有利になるような言葉の使い方はどのようなものか、これから理解していきましょう。
テスト&受験勉強を加速する「セルフトーク」の実践法とは?
人間が高い能力を発揮するには、自分が使っている言葉=セルフトークをコントロールすることが重要なことが分かりました。
テスト勉強や受験勉強にも、言葉のコントロールが不可欠です。
セルフトークのコントロールは以下の2つを行います。
・ネガティブな言葉を使わない
・ポジティブな言葉を使う
ポジティブなセルフトークのことを「スマートトーク」と呼びます。この記事をお読みの皆さんはぜひスマートトークを心掛けてください。
基本的には自分が良い言葉だと感じるものだけを使うようにします。セルフトークの何がポジティブで何がネガティブなのかは、突き詰めると自分の設定するゴールによって決まります。
良いか悪いかに絶対的な基準はないため、自分の価値判断が言葉の基準になります。
他の誰かの価値観に基づいて決めてはなりません。例えば「A大学」に合格するためのセルフトークは志望校が「B大学」である人には不適切でしょう。
なのでセルフトークのコントロールは、基本的には自分が心から望むゴールに合致したものである必要があります。
ゴールには以下の条件があります。
①自分が心から達成したいと望むものであること
②現状の外側のゴールであること
理想は自分のゴールに向けた言葉を使っていくことです。ゴールを設定していない場合は、自分がプラスだと感じる言葉を使うことから始めてください。
ポジティブなセルフトークを続けるうちに自分が目指すべきゴールも見えてきます。セルフトークのコントロールから始めてもいいが、自分のゴールを設定してゴールに合致したセルフトークを使うということも覚えておいてください。
セルフトークの基本は自分にとってポジティブな言葉を使うことでした。言葉が現実と同じような影響力を人間に与えているため、プラスの言葉を使えば良い影響を受け取ることができます。
普段から自分の使う言葉を意識していない人は、ネガティブな言葉を使う割合が多いのが普通です。なぜならネガティブな体験の方が強烈に脳に焼き付くからです。
生物は生存のために危険を避けることを重視してきました。生き延びるために身に付いている性質が「失敗を記憶する」ことです。
人間は知らず知らずのうちにネガティブな思考の方に慣れてしまっていることが多いのです。
生物としての本能が現代社会を生きる私たちにとって必ずしもプラスに働くとは限りません。
言葉はその一つです。自分で意識してポジティブな言葉を使う習慣を身につける必要があります。
セルフトークを段階に分けて見ていきましょう。
ネガティブなセルフトークをしない
セルフトークは意識しないとネガティブな内容のものが多くなります。まずは自分がどんな言葉を使っているのかを観察しましょう。
セルフトークの中からネガティブな内容の言葉を減らしていきます。始めから完璧でなくても気にする必要はありません。
ネガティブな言葉を使ったときは「これは自分らしくない」という自己対話を行い、ポジティブなセルフトークへと修正を繰り返します。
ポジティブなセルフトーク=スマートトークを行う
始めのうちはネガティブなものがないかを吟味し、それを使わないようにします。
セルフトークのコントロールを続けているうちに、よりポジティブな表現を使うという積極的な段階に入ります。
より良い言葉を選んで、自分自身や周囲の人に語りかけるようにします。このような肯定的な言葉に満ちたセルフトーク=スマートトークを行います。
アファメーションをセルフトークにする
アファメーションは、自分を肯定する宣言のことです。
あらかじめ自分で用意した肯定的な言葉を自分に語りかけ、理想の自分のイメージを強化します。アファメーションは朝起きたときや夜寝る前などに行います。
理想はアファメーションをセルフトークとして語りかけることです。
アファメーションのルールには下のようなものがあります。
①一人称=「私は~」で始める
②肯定形=ポジティブな表現を使う
③現在形=今起きていることとして表現する
自分がすでに目標を達成している内容の言葉を使い、現実とのギャップを脳内に生み出します。そうすると脳は理想と現実の間の違和感を解消するために、自然とイメージした自分へと移行しようとします
アファメーションは先ほどにも説明したゴール設定を先に行う方が良いと思います。自分が心から望む現状の外側のゴールに向けて、自分を肯定する言葉を作ります。
日々の勉強や受験に使えるアファメーションは、例えばこのようになります。
「私はテストで○○点取れて嬉しい」
「私は○○大学に合格して誇らしい」
「私は頭がいい」
「私は勉強が大好きだ」
すでに目標を達成している内容で作成して唱えます。もちろんネガティブな言葉は常に使わないようにしましょう。
アファメーションを作るのは少し時間がかかりますので、例文を参考にするのも良いでしょう。
有名なアファメーションの例だと「私は毎日あらゆる面でますます良くなっている」などがあります。
このアファメーションは人生のあらゆる面について肯定的な内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
また「ありがとう」などの短い言葉を繰り返し唱えるのも簡単にできて効果があるためお薦めです。
ネガティブなセルフトークをやめ、ポジティブなセルフトークを常に行うようになった時、自分の目に入る情報や自分の行動が自然と変化していることに気が付くでしょう。
そのためには、理解するだけでなくセルフトークのコントロールを実践してください。
まとめ
●人間は言葉から大きな影響を受けている
●人間は「イメージ」と「現実」を区別しない
●自分の頭の中の言葉=セルフトークをコントロールする
●セルフトークはネガティブな言葉を使わない→よりポジティブな言葉を使うという段階を経る
●自分のアファメーションを用意し、日々をスマートトークで過ごす