本稿では、テスト勉強に使える「脳のつじつま合わせ」の方法を解説しています。
脳のつじつま合わせは無意識、つまり本人にも自覚なく起きること。この無自覚の脳の働きが、皆さんが勉強する際に重要なのです。
例えば皆さんにはこんな体験はありませんか?
”「勉強をしないと」と思いながらも、なかなか手が付かず、時間だけが過ぎていく…。”
このような「やろうと思っているのにできない」という現象は、人の脳が持つ性質に関わっています。脳のメカニズムを知ることで、テスト勉強を思い通りに進める方法を学んでみましょう。
テスト勉強に使える「脳のつじつま合わせ」とは?
テスト勉強を進めるためには脳の仕組みに合った方法を実践することが大切です。国語、数学、英語などの教科に関わらず人間の行動を決めているのは脳の働きだからです。
本章のポイントはこちらです。
Point
・脳は無意識に一つの整合性を維持する
・内心「したくない」と感じていることは無意識が回避する
・テスト勉強を心から望むマインドを作れば、勉強は思い通りに進められる
各教科の効率的な勉強法は他の記事に譲ることにして、今回はテスト勉強とう行動を引き起こすための理論を解説します。「勉強しようとしているのにできない」という、勉強をついつい避けてしまう心理が理解できるはずです。
テスト勉強を避ける脳の仕組み
脳の基本的な仕組みとして「認知的整合性」があります。
認知的整合性とは「脳内では一つの統合された解釈しか維持できないと考える理論」です。
矛盾を感じる2つのことが心の中にある場合は、どちらか一方しか選ぶことができません。2つの異なる解釈を同時に維持することができず脳が自然と埋め合わせを行います。
簡単に言えば「脳は勝手につじつま合わせをする」ということです。
この「勝手に」というところがポイントで、本人すらも気が付かない無意識で行われていることです。
テスト勉強に向かうには無意識の働きが重要
脳には本人も気が付いていない働きがあります。
その働きが「無意識」です。人間は本人が気が付かないところで、無意識の働きによって行動が決められたりしています。
本人の意識としては「勉強しよう」と思っていても、無意識としては「勉強したくない」と感じている。
無意識の働きに本人は気が付かないため、「変わりたいのに変われない」というループになります。
勉強で言うと、脳にとっては「成績を上げたいと思いながらも、今の点数を維持する自分」が快適な状態になっています。
自然と勉強以外のことをして元の自分の成績を維持しようとします。
『すっぱいぶどう』から分かること
脳のつじつま合わせを理解するのに分かりやすいストーリーがあります。それは『すっぱいぶどう』というイソップ物語のお話の一つです。
【すっぱいブドウ】
“ある日キツネが、ブドウの木の下を通りかかりました。その木にはおいしそうなブドウがなっているのですが、高いところにあるため、キツネは取ろうとしても届きません。
ブドウを取ることをあきらめたキツネは「あのブドウはすっぱいから、いらないや」と思って去っていきました。”
物語の始めではキツネはぶどうを取ろうとしますから、「ブドウが食べたい」と思っていました。しかし、ブドウが取れないことが分かると「すっぱいからいらない」と考えます。
ブドウをあきらめたときのキツネは、自分で意識して「ブドウはすっぱい」と思ったのではないでしょう。
「ブドウを食べたい自分」と「ブドウを取ることができない自分」という2つは同時には満たされない、相容れないものです。
心の中では2つが衝突するためどちらか一方を選ぶしかありません。この葛藤を解消するためには以下のいずれかを行わなければならないのです。
①ブドウを現実に手に入れる
②ブドウはいらないと思う
①の選択肢が実現不可能なキツネは、頭の中でストーリーを作り出すことで状況に対して埋め合わせをしました。「すっぱいブドウ」はそうやって無意識が作り出した解釈です。
これは物語ですが、私たちも同じような思考を無意識のうちに行っています。
例えば好きな人と結ばれなかったとき、「もともとそんなに好きではなかった」と状況とつじつまの合う解釈をしたりしませんか?
このような心の働きは実験などでも確かめられていることです。心理実験などの結果を見ると「人間とはこんな生き物だったのか!」と驚かされます。
テスト勉強が加速する「脳のつじつま合わせ」の使い方!
前章では脳が勝手に(無意識に)「つじつま合わせ」をすることを確認しました。本章では、脳の無意識の働きをテスト勉強に活かす方法を考えてみましょう。
ポイントはこちらです。
・エフィカシー(自己評価)が上がると、脳は自動的にイメージの世界へ向かう
・「言葉」「イメージ」の働きを使って、自己評価を常に高くする
「つじつま合わせ」が現状維持に向けられると、脳は様々な理由を作って勉強を避け、これまでの成績を維持します。
脳に「テスト勉強をしている自分」を選ばせる
つじつま合わせを勉強に活かすためにはどうすればいいのでしょうか?それは「勉強ができている自分」に向けて認知的整合性認知的整合性を働かせることです。
「自分はできる!」と本気で思っていると、脳は高い自己イメージとつじつまの合う現実を生み出そうと働きます。
自分はどのような人間かという自己イメージのことをエフィカシー(自己評価)と呼びます。エフィカシーを上げれば、それに伴って能力は自然と上がります。
エフィカシーが高い状態は、自信があることに近いものです。
・エフィカシーが高い=自信がある
・エフィカシーが低い=自信がない
以上のように整理すると分かりやすいでしょう。
例えばある人が、いつもテストで低い点数を取っているとします。順位も良くありません。
もしこの人が「自分はテストで100点取って当然!学年1番で当然!」という高いエフィカシーを持つと、どうなるでしょうか?
脳が現在の自分に違和感を感じ、高いエフィカシーの世界へと近づきます。脳は「できるというイメージ」と「できていない現実」の両方を維持することができません。
無意識が一つのつじつまの取れた世界を維持しようと勝手に働きます。
エフィカシー(自己評価)を高く維持しつづけると、現実とイメージのズレを埋めようとします。つまり勉強への意欲が湧いて行動し、実際にテストの点数が上がります。
テスト勉強がすらすら進む実践ワーク
エフィカシー=自己評価が上がると、脳は勝手につじつまを合わせてイメージの側に移行しようとします。
本章ではエフィカシーを上げる具体的な方法を知っておきましょう。理論だけでなく実践を行うことで目標を実現することができます。
【エフィカシーを上げる実践ワーク】
①セルフトークのコントロール
②成功体験を量産するメンタルトレーニング
順番に理解していきましょう。
ワーク①セルフトークのコントロール
セルフトークとは自分が使う言葉のことです。自己イメージは、セルフトークによって作られます。
自分のセルフトークを常に観察してコントロールします。ネガティブな言葉を使わないようにし、よりポジティブな言葉を使っていきます。
人間は言葉から大きな影響を受けています。小説を読んで感動して涙をながしたり、他者からの言葉で傷つき喜ぶことなどはその例でしょう。
セルフトークは1分間に3~5回行われると言われ、1日に数千回行っている計算になります。これほどの量の言葉が日々私たちに影響を与えています。
ポジティブで自分を肯定するような言葉を、使って自己イメージを高めてください。続けるうちに、自己イメージに相応しい行動や能力が身についてきます。
参考:テスト勉強・受験勉強を加速させる「セルフトーク」の方法!
ワーク②成功体験を量産するメンタルトレーニング
こちらは言葉ではなく記憶を使う方法です。
記憶を使うとイメージの臨場感が上がります。自分が上手くいった経験を追体験することで、自己効力感をより強固なものとしていきましょう。
【成功体験を量産するメンタルトレーニング】
①過去の成功体験(上手くいったこと)を5つほど思い出して紙に書きだす
例:テストの点数が上がって嬉しかったこと
例:スポーツでいいプレーができて誇らしかったこと
②毎日起きた時と寝る前、紙に書きだした文章を読みながら上手くいった体験を思い出す。
このとき、周囲から褒められたことや自分の嬉しい感情もリアルに感じる。
これを2週間続けてください。エフィカシーが飛躍的に上がります。
①の紙に書き出す成功体験といっても、誰もが認める偉業のような必要はありません。「嬉しい」「誇らしい」などのポジティブな感情を自分に喚起してくれるものを選びましょう。
自転車に乗れるようになったとか、字が綺麗だと褒められたなど、上手くいったときの記憶を引き出します。
今まで生きてきたということは、その分何かを成し遂げ乗り越えてきたことの証拠です。
記憶を辿れば成功体験は誰にでもあります。書き出すには時間をかけてもいいので、じっくりと探してリストアップしてみてください。
過去の出来事はすでに過ぎ去ったことで、現在や未来には関係がありません。ですが、記憶を未来へと向けてにプラスに使えるのであれば、積極的に活用したほうが良いでしょう。
どちらの方法も一日二日で効果が感じられなくても、継続することで大きな効果が現れます。ぜひ実践してみてください。
まとめ
●脳は無意識につじつま合わせをする
●本人も気が付かないうちに、脳はストーリーを作っている
●エフィカシー=自己評価を高めると、高い自己評価につじつまを合わせて能力が高まる
●【エフィカシーを上げる実践ワーク】
①セルフトークのコントロール
②成功体験を量産するメンタルトレーニング
●習慣的にエフィカシーを上げることで、脳はイメージ通りの自分を自動的に実現する